ついに梅雨の気配がしてくる6月に突入してしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。雨が降るとキャンパス内が滑りやすくなり転んでしまうのではないかとびくびくしているブログ担当の大原です。
先日は地道に頑張ることと自分なりの楽しみ方を見つけることについての記事でしたが、今回はもう一つ多くのディベーターの皆さんが直面するのではないかと思われる問題について取り上げてみたいと思います。
バイトに兼部や兼サー、課外活動にボランティア。もちろん勉強も。大学生は時間が多い分やりたいことも多く、実際スケジュール管理が非常に難しいです。ディベートが忙しいとディベートに夢中になるあまり、他のことがおろそかになってしまったり、他のことに夢中になればディベートがおろそかになってしまったり。私自身もスケジュール管理が苦手な分、様々な活動の両立に悩み、これで本当によいのだろうか?なんてよく考えてしまいます。
そんな今回は、体育会系の部活にも全力で取り組みつつ、ディベートでも部長を経験したうえに輝かしい成績を収められている国際基督教大学4年の近藤さんに記事を書いていただきました。
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ディベートにタックルする。
国際基督教大学教養学部4年
近藤 隆彦
このエッセイを読まれている皆さんのほとんどはタックルというものをした経験がないと思います。ラグビーやアメリカンフットボールのような球技では、ほぼ全速力に近い速度で走る相手に自分も全速力でぶつかり、タックルをして相手を止めます。そんなことをすれば体は痛みを感じますし、その恐怖と痛みを克服するのは「気合いだ」という無意識な考えが一般的な気もします。しかし、タックルのエッセンスとは技術であり、当たり前のことを考え、工夫しながらきちんと積み重ねないとタックルは上達しないものだと思います。
僕は国際基督教大学で英語ディベート部(ICU Debating Society)と体育会ラグビー部を兼部するスタイルで活動をしています。昨年の2014年はICU Debating Society部長、ラグビー部副将・フォワードリーダーを務め、様々な経験をしました。今回は勉学、ラグビー、ディベートという3本の柱をバランスよく取り組むことを目標としてきた者としてのお話をしようと思います。内容は兼部の世界、兼部での作戦、兼部での成果の3本です。
1, 兼部の世界
2014年の僕は学びを本業とする大学生であり、体を張ったタックルを求められるラグビー部副将・FWリーダーであり、論理的構成力と英語力が求められる英語ディベート部の部長であり、そして近藤 隆彦という私的な人格を持つ人物でした。2014年という1年は学び合い、ぶつかり合い、話し合いながら、僕としてのアイデンティティを作っていたとも言えます。
こんな大げさな書き方をするとものすごく大変なように見えますが、実際には大変と感じることよりも、楽しさと刺激を感じることの方が多く、満足感を覚えることが多いように思います。3つのことを一生懸命やることで、3倍の密度で生活が進む中で「工夫」をして、成果や達成感を3倍の密度で感じれることがその要因かもしれません。
限りある時間の中で3つのことを掛け持ちすると、考えながら工夫をする機会が増えます。教養のために全く未知の世界である英語開講の金融の講義を受講した際は、毎週の小テストと講義中のディベートへの準備をするための時間との戦いが鍵となりました。限られた時間内で電話帳のような教科書を理解し、課題図書となるケーススタディを理解して講義中のディベートでの作戦を考えるために、僕は同じ講義を受講する他の学生と協力して教科書のエッセンスやケーススタディの主要点を事前に整理し合う、というちょっとした工夫をするようになりました。
工夫をすれば成果は出るものです。最初は留学生や帰国生の積極性的な学習姿勢や英語での発言速度に付いて行くのが難しいと感じていた僕も、限られた時間内で行った共同作業で得た講義のエッセンスを理解した上で講義に望めるようになり、自分の意見への自身と発言の機会が増えたほか、小テストの点数も上がり、自分としては成果を感じることができました。
沢山のことを掛け持ちするのは大変ですが、僕は3つのことを一生懸命やった1つの結果として密度の高い工夫の仕方を学びました。大変さに見合うものを得たと感じています。
2, 兼部での作戦
兼部の世界では作戦が求められます。上記の協力するという作戦はその1つですが、実は1番重要な作戦は「当たり前のこと」に真摯に取り組み、きちんとやるという高い理想と目標を持つことだと感じます。
僕はラグビー部副将とディベート部部長という2つの幹部職を掛け持ちするまで、きちんとスケジュールを管理するという当たり前のことをしてきませんでした。予定は頭に入れておけば良い、という考えから、スケジューリングや手帳の重要性を理解することなく生活してきたのです。ラグビー部でもディベート部でも幹部を務めた僕にとっては、予定を重ねてしまってどちらかの重要な行事に参加できないということは原則的にはあってはならないことです。しかし、きちんと予定を管理していなかった僕は痛い目を見ることになります。
ずさんなスケージュール管理の結果として、僕は僕自身が重要だと思う行事に参加できないことが何回かありました。ICUラグビー部の公式戦が最も盛んになるのは秋ですが、この時期はディベートでも秋のJPDU大会や一年生最強を決める「梅子杯」といった重要な大会があり、スケジューリングが重要な時期ですが、僕のミスでラグビーの公式戦の日程と梅子杯の日程を被らせてしまいました。ICUラグビー部が参加するリーグの公式戦の日程は、7月頃に指定された日程の中からチーム同士の話し合いを行って秋のリーグ戦全体の日程の調整を行いますが、僕はその会議で梅子杯のことを考えずに日程調整を進めてしまったのです。実際の梅子杯の当日は13時からICUでラグビーの試合があり、幸運にも同じICUで梅子杯の決勝ラウンドが開催されていたのでラグビーの試合後に梅子杯の応援になんとか行くことができましたが、大きな後悔が残りました。
ダブルブッキングという初歩的なミスは作戦の誤りから生じており、その誤りとは「当たり前のことをきちんとやる」ことに真摯に取り組まないということでした。沢山のことを掛け持ちすると、時間の制約上、スケジューリングや疲労など、必ずどこかで問題が発生します。ここで重要なのが、きちんと予定の管理をすることや、きちんと休息をとり、備えることなのです。ラグビーの疲れを残し続けた状態ではディベート部に貢献できませんし、部活動での予定や疲労を言い訳にしていては勉強ができません。それぞれの時間を決め、決めた時間内で一生懸命に取り組み、次の予定では切り替えて別のことに一生懸命に取り組むという、まさに「当たり前のこと」にどれだけ真摯に取り組めるかが鍵です。そして、これができれば、何かを諦めずに掛け持ちするという選択肢が大きな現実味を帯びるのです。
予定を管理し、時間を守り、一生懸命に取り組んで、ONとOFFを切り替えて次に備えるというのがマルチタスクをする上での重要な作戦であると感じた1年でした。
3, 兼部での成果
これだけ偉そうに語る僕の成果とはどんなものなのでしょうか。残念ながら、3つ全ての点において僕の理想を体現することはできませんでしたが、前進を感じる1年であったと思います。
大きな成果を感じるのは、勉学、ラグビー、ディベートに別々の視点から取り組み、別々の知恵を活かせたことです。例えば、僕は自分が苦手とするラグビーのタックルを克服するために自分の姿を練習や試合をビデオに撮ってもらい、落ち着いている時になるべく客観的になって自分を観察しようとしてきました。冷静になっているときに考えることのできる論理的な視点から、一生懸命になっていたときの自分を見返し、なにが理想からズレていたのかをチェックしました。相手との物理的な間合いや、自分の足の動かし方、重心などを観察し、なにが満足のゆくタックルに繋がっているかを考えました。重要だったのは冷静であればわかる論理と、無我夢中になっている自分の行動とのズレを見つけることです。
同じことはディベートの練習でも活かすことができました。考え方の違いかもしれませんが僕は自分のスピーチを録音して見直すということはしません。その代わりに、ノートを必ず見直していました。練習のノートを後から冷静になって見直すと、自分がどれだけ支離滅裂なことを言っていたかが、なぜその考えに繋がったのかという観点から観察できます。これはラグビーのタックルの研究と同じように、冷静な時には理解できる論理的な理想像と、実際の自分のスピーチの間のズレを発見し、理解するためのものです。冷静になって客観的になってから見直したノートが意味不明であれば、そのスピーチは観衆に届くはずがないのです。後から見直しても理解できるノート作りは、整理され、まとまったスピーチノートに繋がり、それは「わかり易さ」という僕の考える1つの理想に繋がったと思います。
結び
無意識で「気合い」に頼っていたタックルを見直すためにした工夫は、無意識で独りよがりになりやすいディベートのスピーチを見直すときにも活きていました。ラグビーのタックルも、ディベートのスピーチも、まだ完璧な理想像からはほど遠いですが、複数のことに一生懸命取り組む過程で生まれた工夫や学んだことは、僕の理想に近づくことに大きく役立っている気がします。
兼部、掛け持ちというと大変というイメージが1番にくる気がします。たしかに掛け持ちをすることは簡単ではありませんが、それにチャレンジする中で得られるものは多く、素晴らしい経験になると思います。そして、部活動を掛け持ちするコツとは、予定の管理やON・OFFの切り替えなど、誰もがやろうと思えばできることだと思います。
様々な選択肢がある大学生活の中で、課外活動の掛け持ちを得体の知れない恐ろしさから諦めようと思っている方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。このエッセイが課外活動の掛け持ちをして様々な事柄の「いいとこ取り」にチャレンジする人の後押しとなれば、うれしいなと思います。
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近藤さん、お忙しいなか素晴らしいエッセイをありがとうございました。
皆さんも是非やりたいことには恐れずにどんどん挑戦し、有意義な悔いのない大学生活を送ってくださいね!
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