2015/09/29

32nd JPDU Tournament 結果報告とCA金川平志郎の寄稿文

皆さんこんにちは。
お団子がおいしい十五夜をどう過ごされましたか。ぼくはバイト先でカレーライスを食べながらお団子に思いを馳せていました。お団子、美味しいですよね。特にみたらし団子は割と何個でも食べられる気がしますが食べ過ぎは太る原因になるので気を付けたいと思います。ブログ担当の吉井です。

ついこの間まで体調を崩しひたすら寝続ける日々を送っていたぼくですが、夏休み最後の思い出だけはしっかりと作りました。
そうです!32nd JPDU Tournament、通称秋Tです。
秋Tに向けて連日練習を重ねた上級生の方や初めてのBP大会という1年生まで、多くのディベーターが夏休み終わり前(おそらく)最後の大会を楽しんでいました。
結果は人それぞれだったと思いますが、続くBP Noviceや梅子杯、NEAO、Japan BPといった大きな大会が続くので皆さん気持ちを切り替えて頑張っていきましょうね。

今回は1.大会結果報告、2.Chief Adjudicator 金川平志郎さんによる寄稿文の二本立てでお送りしたいと思います。


1.大会結果

Champion
Tokyo C
Grand Finalists
WAD A
Tokyo F
Hit-U A
Semi Finalists
Tokyo A
KDS A
WAD C
ICU D
Quarter Finalists
WAD B
Nagoya A
KDS B
KDS D
ICU B
OPU D
Tokyo D
Kyoto A
Best Speaker
Shingo Fujita (WAD A)
2nd Best Speaker
Tatsumi Uchiyama (WAD A)
Fumiko Hirasawa (Tokyo C)
Shin Eto (Hit-U A)
5th Best Speaker
Ryoya Kurauchi (Tokyo C)
Keita Kurita (Tokyo F)
7th Best Speaker
Kengo Matsunaga (Hit-U A)
Chikara Mizokami (Tokyo A)
9th Best Speaker
Yoshito Ato (Tokyo D)
10th Best Speaker
Masahiro Ito (Tokyo F)

Best Adjudicator
Tomoya Yonaga (Hit-U)
2nd best adjudicator
Yasufumi Tozuka (Tokyo)
3rd best adjudicator
Kohei Arakawa (ICU/Hit-U)
4th best adjudicator
Kazuki Tokunaga (Tokyo)
5th best adjudicator
Go Shimizu (Hit-U)
6th best adjudicator
Hirohito Asai (ICU/Tokyo)
7th best adjudicator
Ryo Hayakawa (KDS)
8th best adjudicator
Toshiaki Ikehara (ICU/WAD)
9th best adjudicator
Yusuke Yoshida (Hit-U)
10th best adjudicator
Marina Nakamura (ICU)

2.CA金川平志郎による寄稿文
秋TでCAをつとめました東京工業大学の金川と申します.はじめに,大会に参加されたディベーターの方はお疲れ様でした.また特に,OB・OGの方々,お忙しい中お越しいただき,ありがとうございました.
 さて,寄稿文と言われるとすごいプレッシャーかかりますね.一部のブログの読者からブログにお叱りの言葉を頂いたとかなんとか言われているので更に緊張しますね(これは僕の想像です).僕は一日の終りにちょっと書く感想文的なブログのことをかなり想像していて,そんなマジメな文章は書けないなって思っています.また,なんでもいいから秋Tを通じて思ったことを書いてくれと言われたので,とりあえず思ったことをつらつら書きます.多少僕のような立場の人間が書くと好ましくない事柄が書かれているかもしれませんが,僕は思ったことをつらつら書きます.あとなぜか一人称が僕で始まってしまったので,これ以降は一人称は僕のまま貫きます.

はじめに
 さて,僕は基本的に頼まれたらそんなに断らない質なので,今回もCAやってくれと言われたとき,まあ他に人いないんだったらやってもいいかくらいの気持ちで承諾しました(今はとても後悔しています).ACは,モーションを作ったりアロケを組んだりというのが仕事の大会運営のチームです.「そんなにACとか苦労しないっしょ!」と思っていたので承諾しましたが,甘く見ていました.それは以下に書く2つの理由からです.
1.ACが見つからない!
 はじめに申し上げておくと,今回のACには本当に感謝しております.ほとんどの人が就活等で忙しい中,またはディベートとは距離を置いていたなど等の事情があるなか,ACを引き受けてくれたこと,またその助けをありがたく思っています(おかげで僕はそんなに仕事をしなくてすみました).
しかし,このACになるまでには実は長い道のりがありました.
 先ほど行ったとおりACの仕事はモーションを作ったり,アロケをするということで,その仕事をする上で適した人を選定しなければなりません.もちろん色々と選定の基準には主義主張があると思いますが,僕はモーションを作るための経験や知識,一緒に仕事ができそうか,またどれだけ参加するジャッジやディベーターのことを知っているかだとかを考えて選定しようと考えていました.
 ただ,このACの選定は難航しました.いくつか原因があります:
①就活時期の変更によりインターンシップ・就活で忙しかった
ACをやるであろう現役の大学生は3年生・4年生になる思いますが,就活時期の変更により,時間に余裕のある人が少ないようでした.
②ACになれそうな人→直近の大会でACやってる!
近年多くの大会がAC制をやっていることや,ブレイク実績を持っている人は限られている(人数的にも大学的にも)ということがあるためか,なかなか直近の大会に被せないで人を選ぶというのは難しいものでした.
 こういった事情もあり,AC探しは苦労しました.また特に僕は,いまの3年生の代など,下の代に入ってもらおうという目標があったため,AC選定は難しいものでした.こう言うと老害っぽいですが,いまの3年生はACをできるような実績を持つ人間の競技人口が特に少なく,また3年生以下の代の人はBPでのジャッジブレイクの実績に乏しいということもあり,どうしたものかと考えました.後にまた説明しますが,僕はこの状況に少し不安を覚えました.

2.モーションがなかなか決まらない
 僕は以前BP Noviceという大会でACをやっていたので,まあなんとかなるだろと考えていました.しかし,ここでの失敗は「BP Noviceは,会議を徹夜を何回も繰り返すというブラック企業的な働き方をしていたこと」を忘れていたことでした.そうなのです.相当暇な大学生じゃなければ,そんなやり方はできないのです.そして問題だったのは,今回ACを引き受けた人は私を含め,そんな感じの大学生ではなかったということですね.
大会のひと月前くらいからモーションは作り始めて,モーションの数は増えていったのですが,会議でプレパをしてみるとどうでしょう,たくさんあった自信のあるモーションは,いつのまにかボツのレッテルを貼られて消えていったのでした.こうして大会の一週間前か二週間前から,モーションを更に作るという作業が始まったのでした.またその間にもジャッジテストの採点や就活など色々人によっては大事なイベントもあり,結局徹夜会議などを何回か繰り返すことでようやく今回大会で出したモーションへとたどり着いたのでした(ここで僕がいいたいのはいかに,ACが大変かということではなく,計画性を持って行動しないと大変になりますよってことです).
 大会に出せるモーションは,(主義主張はいろいろあると思いますが),基本的には公平で,かつ参加するディベーターの能力に合ったものだと考えています.またディベートというのが公的な主題に対して賛否を論じる競技であるため,そもそも賛成反対がきちんとできあがる,つまり自然とディベートになるようなものを作る必要があります.今回の大会でも,それを念頭にどんなことが言えるかなとACの間でプレパやリサーチをして会議を行いました.
 またこれは個人的な話となりますが,特に注意したのはバリューモーションです.ありがちなのはTH regrets ~ やTH opposes のような形のもので,これらはとてもモーションを作るのに便利な技なので,つい使いたくなってしまいます.なぜならとりあえず悪そうな社会問題を持ってきたり,とりあえず自分がregretしたいな~って物を持ってきてあげればカンタンにモーションっぽいものができるためです.ただ問題なのは,それがかならずしも良いモーションになるとは限らないということです.
 例えば,TH regrets ~ となっていても,それが誰にとってregretすべきなのかが明確でないものになっているとどうでしょう?おそらく4チームの間で別々の主体に対する価値判断が行われたりするかもしれません.もしくは,大げさな例ですが,死生観だとか人生観のように価値判断に優劣がつけられないもしくは公的な目標・共通したゴールがないようなものが価値判断であるようなモーションは,そもそも「regretしたいやつはして,しないやつはしなければよくね?」のようにディベートが起きない場合があります.
 と,こういう懸念もあってか,今回の大会ではそういうワーディングを使ったモーションは比較的少なくポリシーディベートになるようなモーションが多くなったかととは思います.

結局感想は?
ここからは特に論理的ではない感想というかただ思うところを書いていきます.

1.このままやっていけるのか(AC)
 これは僕がAC選定で手間取ったというのがありますが,現役生のジャッジ実績・ディベーター実績を持つ人間の中だけでACを選定していくのは難しいのかなあと思います.というのもいまの3年生以下の世代の中だけで,実績を持つ人間だけで選ぶと先ほども言ったとおりかなり候補が狭まってしまうためです.またある程度ジャッジでの実績を稼いでいるような4年生は今年で卒業し,社会人となってしまうため,なかなかにこれ以降現役生だけでACを編成するのは難しいのかなあと思います.もちろん社会人をACに入れることがカンタンだというわけでもありませんが.今のような状況が起きているのは色々な原因があると思いますが,国内大会を見れば,昨年卒業されてった代の方々のように,ディベートを長く続ける方が増えたことによって,下級生が実績を稼ぐのが難しい状況が続いたことがあるのかなあと思います.僕が思うのは,あんまり実績だとかなんだとかにうるさく言い過ぎるとそもそもACが作れないという状況にもなりうるので,ほどほどになったほうがいいんじゃねってことです.5人じゃなくてもいいし,前やった人がやってもいいし,社会人でもいいしって感じにですね.
 あとは競技人口をいかに多めにキープするかですね.やはり競技人口が多くないと選ぶプールが少なくなるので,必然的に選定は難しくなります.また特定の大学だけでなく,色々な大学がブレイクするということが望ましいですね.望ましい状況を述べただけで特に解決策はない感想ですが,こうだったらなあと今回ACやって思ったのでとりあえずここに記します.

2.ディベーターの質とジャッジの質
 大会を通して思ったのは,一つの大会で,強いディベーターと良いジャッジはなかなか両立しないなということです.これは日本の大会では秋から冬にかけて起こる現象で,ディベートを引退するぞ(実際にするかはさておき)の大会の引退前の駆け込み需要(?)で大会に出る上級生が多くなる時期だからだと僕は認識しております.春Tや今回の大会では,社会人や大学院生のジャッジが多かったため,ある程度はその両立ができたと思っていますが,現役の大学生だけでは不可能だったなあと思います.このまま社会人や大学院生に頼る構造はそんなに長く続かないんじゃないかなあというのが今思っていることです.
 もちろんディベート界としては,経験ある社会人や大学院生の参加が多いほうが,好ましい状況ではあると思います.某OBの方のように,平日の夜にディベートを教えてくださる方や,大会でジャッジをしてくださる方から学ぶことがとても多いからです.しかし同時に,現役生は現役生で社会人に頼らなくてもやっていける構造を作っておかないとまずいんじゃないかなあと思うわけであります.いつお仕事でいなくなるかわからないですからね.
 そこで僕がいいたいのはもっとジャッジをしようということです.もちろんジャッジ以外にも色々改善しなければならないところはありますが,とりあえず書いときます.
 これは,提供ジャッジを先輩に任せてディベーターとして大会でまくるということを考えなおせということでもありますが,もっと大切なのは,普段の練習からジャッジをきちんとやることですね.
 ジャッジは必ずしも面倒くさい裏仕事ではありません.ジャッジになったとき,とりあえずよくわかんないモーション出してみるとかじゃなくて,きちんと練習になるモーションかを考えてみたり,ラウンドが始まる前にディベーターと同じようにプレパしてみるだけでもディベーターとしてのスキルを磨く練習にもなると思います.またディベートそんな興味ないけど(あってもいいですが)英語力鍛えたいって人はRFDを,ディベーターがスピーチをつくるがごとく英語で準備してみると良いと思います.ジャッジングから学ぶことはたくさんあります.ジャッジを通して他人の良い所・悪い所を批評することは,自分のスピーチを省みるいい機会になります.
 もちろんジャッジもディベーターと同じように,自分だけでは何が悪いのかわからないことが多いと思うので,先輩と一緒にラウンドに入ったりだとか,ディベーターからのジャッジングに対するフィードバックをもらって改善していくようにしていきましょう.先輩がいないとか,自主練したいなんて人はAC見解などのある大会のジャッジテストの動画をみたりすればいいんじゃないかと思います.あと基本的にジャッジは英語の耳ができてないと難しいので,英語のリスニング力を鍛えるというありがちなトレーニングも必要ですね.海外ディベーターの動画にチャレンジしてみるのもいいと思います.
 またディベーターの人は,ジャッジに対して建設的なアドバイスを上げることを意識しましょう.練習の試合で負けにされたからといってブチ切れて噛み付いていたのでは,相手を非難しているだけで意味がありません.噛み付いて終わりではなく,大切なのはそのジャッジングでなにが分からなかったのか,どういう風にすれば改善できたのかということを教えてあげることです.ジャッジも練習に参加している一員ですので,ディベーターと同様に自身を改善する機会が与えられて然るべきだと思います.「おまえは下手くそ!」しか言ってこないジャッジがいたらイラッとするでしょう?練習は,フィードバックをくれるジャッジにとってもまた練習なのだということを意識しましょう.

おわりに
 ジャッジの評価の仕方は,ディベーターのスピーチを形作っていきます.仮にこのコミュニティがイラジャばっかりだったら,そのイラジャを説得する方向をディベーターは模索していきます.現実的にそのようなことは無いとは思いますが,強いディベートのコミュニティになっていくためには,コミュニティのジャッジのレベルが向上していくのが好ましいのかなと思います.
 個人的には先程述べたジャッジの質とディベーターの質が両立するようなコミュニティは大会が後腐れがなくていいなあと思っているので,そういう方向性に向かって行ったらいいなとおもいます.みんなジャッジも頑張って,サステイナブルなディベート界にコミットしよう(意識爆上げ).



金川さん素敵な文章ありがとうございました。
ジャッジ不足、コミ不足(僕の思い)は共に悩みの種ですね。
これからのディベート界が明るくなるように、ぼくも少しずつジャッジに挑戦していこうと思いました!
ではみなさんも、素敵な後期生活を!




2015/09/20

JPDU Summer Seminar 2015が催行されました!

皆さんこんにちは。ついに9月も中旬に差し掛かり、夏休みの終わりを心の底から後悔しています。昼まで寝る生活が続き、後期の授業にきちんと出席できるか不安ですが頑張りたいと思います、ブログ担当の吉井です。

さて、つい先日JPDU主催のビッグイベントが終了しました。
そうです!以前このブログでも取り上げたJPDU Summer Seminarです!
今年も例年と同じく多くの方が参加し、各々楽しい時間を過ごしていきました。

そこで今回は、そんな夏セミのTDを務めた神奈川大学の吉井遼太さんから寄稿文をいただきました。そうです、何を隠そう僕です。自分の担当するブログで自分が寄稿文を書くという謎現象を目の当たりにした瞬間です。



皆さんこんにちは!(二回目)
JPDU Summer Seminar 2015にてTotal Directorを務めさせていただきました神奈川大学3年生の吉井遼太といいます。大会会場ですごく派手な金髪を見かけたことがあるでしょうか。それが僕です。
寄稿文といっても普段色々とブログに書いていたりするので、今回は1.今年度新たにやってみたこと、2.セミナーの感想、3.運営側から見た話、をしようかなと思います。

1.今年度のセミナーでは例年とは違い、3日目を全てエレクティブという選択形式(各レクチャラーの方々がそれぞれの得意分野について講義を行い、参加者が選ぶことができる)にしたことです。例年エレクティブのコマ数に関してはご意見をもらうことが多く、部屋数や部屋のキャパシティの関係から希望したエレクティブを受けられないといったことが多発していました。
 そこで3日目のエレクティブのコマ数を3→4にし、1コマの時間を60分→90分に変更することで多くのコマ数を確保し、かつコマの時間を長くすることで参加者の方に濃い時間を楽しんでもらおうと思いました。レクチャラーの方々には負担を強いることになってしまい申し訳なかったのですが、結果として参加者の方が楽しんでいただけたのであれば幸いです(笑)。


2.今回セミナー運営を通してみて思ったことは、第一に楽しい、第二に大変ということでした。
 信頼できる同期や先輩、後輩と一緒に仕事ができたこの数か月、またセミナー3日間は本当に楽しい時間でした。空いてる時間に笑ったりほのぼのしたGHQだったりと、このメンバーでセミナーを運営できてよかったです。
 ただやはり大変なことも多く、時間管理や部屋数、当日コミの確保といった面に関しては直前までドタバタする結果となってしまいました。
 また、レクチャラーの決定までとても時間がかかってしまったのも一つ大きな反省点です。この時期の4年生や大学院生の皆様はどなたも就職活動やそれぞれの学業で忙しい方が多く、断られてしまうことが多かったです。レクチャラー決定が遅れてしまいましたが、結果としては素晴らしいレクチャラー陣でセミナーを執り行うことができたのではないかと思っています。
 ただ、こちら側の不備や不手際により参加された方の中には不満を感じられた方もいるかと思います。もし今後大会を運営する機会があれば、この反省を生かしてスムーズな運営にしていきたいと思います。
 たくさんの応援、ご指摘、お叱りの言葉、本当にありがとうございました。


3.最後になりますが、ここ最近僕が大会やセミナー運営に携わっていて感じるのは、集まるコミが固定化しつつあるな、と。経験のある方が多く集まるのは、とてもスムーズに運営ができるし仲も良いし、短期的に見るとすごく楽でいいことなんですが、それが長期化してしまうと後進が育たず、結果として大会やセミナーを回せる人がいない、という問題に直面してしまいます。
 特に正規コミに関しては例年の引き継ぎ書がしっかりとしているので、初心者の方でもできるし、毎回数名はコミ経験のある方がコミ内にいるので、その人達に聞いてみるとスムーズにできたりもします。笑
 愚痴っぽくなってしまいましたが、もし興味があるけど勇気が出ない…と思っている方がいたら、是非一緒にコミをやりましょう。笑
 大変なことも多いですが、やってみると充実感だったり思い出だったりができてとても貴重な経験ができると思います。 

 最後に。このセミナーに関わってくださった全ての方に心からのありがとうを伝えたいです。
 セミナーで得たものを、これからのディベート人生に役立ててくださるとコミ一同嬉しいです。




吉井さんありがとうございました!(セルフお礼)
これからの大会に向けて、今回のセミナーがみなさんにとって良いものになればと思います。

2015/09/13

まさに気分は綱渡り…秋のスケジュール管理テクニック!

いよいよ9月に入ってしまいました。今年の夏は去年より過ぎるのが早いなぁとか涼しい日があったなぁとか考えながら私は夏セミTDの仕事に追われながらオリンピックセンター内を奔走しておりました。ちなみに今週は秋Tのお仕事でICU内を爆走していることでしょう。もしこのおかげで痩せることができたらコミダイエットとして学内で喧伝することにします。嘘です。

さて皆さん、いよいよ秋ですね(二度目)。
秋と言えば毎週のように大会が続くまさにディベートの秋です。地方に遠征に行ったり現地のネットカフェやカプセルホテルを探したり、と忙しい週末が続きます。
体調管理ももちろんそうですが、やっぱりお財布やスケジュールの管理も大事なのではないでしょうか(笑)
「ディベートは紙とペンがあればできる」と言われていますが、やはり先立つものはなんとやら、色々と頭を回さなければなりません。

そこで今回は、ブログ担当2人のスケジュール管理方法なんかをお伝えしたいと思います!


ver.吉井

管理方法とは巧言令色。ぼくの場合「なんとかなるよ」精神です(笑)
個人的に最近の生活の中心がディベートになりつつあるので、スケジューリングはそっちを先に入れるようにしています。大会や他大学の練習は1~2ヶ月ほど前から少しずつ埋めて、ダブルブッキングがないように(一応)心がけています。

1.バイトのシフトはその合間を縫うように入れるのが基本ですね。他大学練習の後にバイトを入れると割と楽だったりします。日中はディベート、夜はバイトという風に時間を有効に使えました。
練習とバイトを両立することができたのでどっちかに偏る生活にはなりづらかったかなと。特にこれからの秋は休日や練習がない日の時間の使い方は結構大事になってくると思うので、参考にしてみてはどうでしょうか(笑)

2.一回の練習をいつも以上に効率よく行うのも一つの手です。夏休みは頻繁にできていた練習が、夏休みが終わって授業が始まると時間が限られてしまいます。授業が終わってからの数時間の練習を濃く効率よく行うために、去年自分は毎回のスピーチに緊張感を持ったり、モーションを少しだけ難しくしたりと色々と試行錯誤してみました。もちろん、空いてる時間やスキマ時間も使っていました。(本当は推奨できませんが笑)授業中に気になるマターを調べてみたり、バイトへの移動中に音源を聞いたりしていました。使える時間が限られている以上、その時間を最大限使えるよう頑張りましょう!



ver.大原

わたしはスケジュール管理がめちゃくちゃ苦手です。どれくらい苦手かというと、苦手すぎてスケジュール考えながら手帳を書くだけで夜が明けます(真顔)

さて、去年のわたしは正直パンクしていました。バイトを2つ掛け持ちし、授業は単位マックスでとってたくせに、9月から12月の頭までほぼ毎週のように大会に参加していました。大会は東京だけではなく、京都であったり、台湾であったり、プチ大移動ラッシュみたいでした。お金は大会に出れば出るほどかかるし、その分練習時間も確保しなければなりません。
そんなわたしが去年実践していたことを書いてみたいと思います。


1, 空きコマの活用
自大学の練習日以外は基本放課後はバイトを入れていたわたしは空きコマを活用することにしました。学内で組んで出る大会に向けての練習はパートナーと空きコマをあわせ、30分でも有効活用し、プレパ練やお互いのスピーチの確認などをしていました。空きコマはせいぜいつかえても90分弱くらいで時間制限があるので、より集中して練習できるうえに、時間を有効活用している優越感に浸ることができるのでおすすめです笑

2, バイトとの両立
大会に出たいのであれば、バイトは重要な鍵を握ってきます。
でもやはり大会前。練習に全ての時間を割きたい!自大学の練習はもちろん、他の曜日は他大の練習に参加し、ない日は帰ってSkypeでプレパ練!!こんなみっちりスケジュールを立てようとしていませんか?わたしの場合失敗しました。これもこれでいいのですが、いかんせん大会が続きまくる秋、これをずっとやっていると財布も体も精神的にもパンクします。なので、忙しくても旅費稼ぎのためにも、また日々のディベートの練習からの気分転換としても、是非うまく予定調整をしてバイトもしてみてください。

(3, メンタル管理)
これはスケジュール管理とはややずれますが重要なので。
これはわたしの失敗談です。これができなくて秋の3ヶ月間くらいでメンタルが絹豆腐になり、色々な人に迷惑をかけてしまいました。大会が続くと先週はブレイクしたのに今週は不調…来週は大切な大会なのにうあああああああってなることがあるかもしれません。
でも、切り替えがとても重要です。今のことを引きずっていても未来には悪影響でしかありません。引きずりまくってずりずりになります。確かに難しいかもしれません。萎えるのも落ち込むのも仕方がないですが、次はいける!頑張る!!やってやる!!!、と意気込めばより前向きな気持ちになれて頑張れることでしょう。たった一回の失敗からさらなる失敗を誘引するのではなく、それをバネにやる気に変えて秋の目紛しい大会シーズンを張り切って楽しんじゃいましょう!




2人はこうして去年一年間を乗り切りました。
色々と失敗があったからこそ、このブログを読んでいる方にはそんな思いをしてほしくないです…笑
時間を有効活用して、これからの大会シーズンに臨みましょう!



2015/09/02

ジャッジの心得とは?悩んでるあなたへ贈る夏終わりのプレゼント

あと数日で前期の成績が出るということをバイト中に思い出し、いま全力でその事実を忘れようとブログを書いて気を紛らわせているブログ担当の大原です。
みなさん夏休みも後半に入りつつありますがいかがお過ごしでしょうか?
最近シャインマスカットというマスカットにはまりすぎて勝手に秋を感じています。


さて、ディベートをやっているとディベートはもちろん、ジャッジをする機会も多いもの。そして上級生になれば必然的に後輩のラウンドのジャッジをする機会も増えます。
しかし、そこで去年の秋頃私は気づいてしまったのです。そう。自分はジャッジが苦手であることに…。
フローをとるとこまではできるし、勝敗もわかるけど、いざRFD(Reason for Decision)を説明するときになるとうまくまとまらなくて、なにをどう説明すれば納得してもらえるのかわからなくて頭の中がこんがらがった靴紐みたいになってしまいます。でもいざ試合中から色々意識して整理して聞いてみようとすると、余計わけがわからなくなってしまい本末転倒。


そこで、今回は私みたいな悩みを抱えている人がきっと他にもいるのではないかと勝手に思い、ジャッジとして日本の大会のみならず、海外大会でも大活躍してる慶應義塾大学3年の大塚さんにジャッジのコツや意識していることを記事にしていただきました!
内容盛りだくさんで濃密な文章なので皆さん是非じっくり読んでみてください♪

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慶應のトムです。
最近はおかげさまで海外にジャッジとして行くことが多くなりました。また、AustralsやWSDCなど日本の大学コミュニティでは主流ではない形式の大会のジャッジもすることがあり、いろいろな経験をさせていただきました。ご支援くださった方、本当にありがとうございます。
そのいただいた経験を踏まえつつ、今回はジャッジについて書かせていただきます。

[目次]
●納得させられるAdjudication Speechのためには
●ジャッジに求められていること
●パネルジャッジこそ能力がいる
●WSDCこそ今大学生が注目すべき大会



【納得させられるAdjudication Speechのためには】
この章の要点…
●ディベーターの言葉やフレーミングをそのまま使ってあげるのが基本
●criteriaをjustifyしてほしい
●どこまで取れたのかを説明してほしい
●analysisの量で判断しない
●責めない

偉そうな見出しをつけていますが、私の理論というわけではなく、MITSUSHI ONOほか先輩方からお聞きしたことを受け売りしているだけです。

●ディベーターの言葉やフレーミングをそのまま使ってあげるのが基本
Adjudication Speechもスピーチです。見せ方、フレーミング、パッケージングにこだわってください。Youngchoの理論ですが、相手(ディベーター)が言っていた言葉を言い換えずRFDでそのまま使ってあげてください。ディベーターは言葉を選んで使っています。言い換えたら意味が変わってしまうかもしれません。ban abortionで、Govがabortion is akin to infanticideと言っていたのに、RFDで「abortion is murderと言っていましたが…」なんて言ったらディベーターは怒ってしまいます。murderじゃなくてinfanticideなんです。もっとやばいやつです。笑
フレーミングもそのまま使ってあげてください。choiceのディベートでchoiceにopposeする側がnegative externality to non-consenting partiesというフレーミングを使ってきた時に、RFDで「harmについて」とか言ったら意味違います!「practicalについて」とか言ったらもっとやばいです!笑 harmの線引きを見せたくてこのフレーミングを使ってるんです。
負けたディベーターは、自分の議論が100%ジャッジに取られても相手の方が上回っていたことが分かると、納得が行きやすいです。無用に言葉やフレーミングを言い換えて「これ言ったのに取ってもらえなかった」と思われては評価も得られません。そのまま使ってあげたら、よく自分の話を理解してくれているジャッジだと思ってくれるでしょう。

●criteriaをjustifyしてほしい
RFDではいくつかのcriteriaやissueに分けて説明されると思いますが、時々ディベートの流れを丸無視したようなRFDが見られます。
典型例は、「practicalとprincipleで見ました」というやつです。もちろんこのまとめ方が一番合っている時もありますが、少数でしょう。一番困るのが、どのディベーターも線引きの話をしてた時に「practicalとprincipleで見ました」とか言われるやつです。誰もpracticalの話で争ってません!practical harmについて前提として言及してたかもしれないけど争点ではないです!逆も然りです。
この二項対立で見るのもいいですが、なぜその2つのcriteriaを使えば勝敗を決められるのか、そのcriteriaのjustificationがほしいんです。「こことここが争点になってたから」とかそのくらいでもいいです。
それがうまく言えないのであれば、他のcriteriaにしましょう。たいていは無理にpractical&principleにしなくても、ディベーターが何かしらでclashを作ってくれているはずです。そのclashが妥当かどうかはまた判断してほしいのですが、とりあえずディベーターが使ってたcriteriaをそのまま使ってあげれば踏み外すことは少ないでしょう。
もしディベーターが使ってたcriteriaやclashを変える時は、なぜそうなったのかをきちんと説明してください。説明なしに勝手に変えられると、ディベート聞いてたの?って思われます。

●どこまで取れたのかを説明してほしい
「同じ言葉/フレーミングを使うように」と言いましたが、ディベートの流れをそのままコピーするだけのAdjudication Speechもまたよくありません。その流れをジャッジとしてどう取ったのか、そここそ説明してほしいことです。
よくありがちな例はたとえばこんなものです。「Govは1st argumentで○○と言っていましたが、LOから××とrefuteが来ていました。ただMGから△△とまた反論されていたので、Govに入れました。」これはただのコピーです。議論をはじから紹介してあげているだけで、何も「Judgment」を下していません。聞きたいのは、substantive argumentとそれへのrefute、それにreconstructionの分析それぞれが、どれほど強いもので、どの程度まで取られ、どのように相手を上回ったかなどです。それをジャッジが客観的な視点から比較的に判断してほしいのです。
よい例はこういうものでしょう。「Govは1st argumentで○○と言っていましたが、●●までは話されておらず、重要性が薄い/motionまで落ちていないと感じました。これに対しLOは××というrefuteが来ていましたが、これは1st argumentの**のメカニズムを確実に切っていると判断しました。ただMGから△△という別の視点からのメカニズムが分析されており、**は成り立っていないものの△△の点で○○の議論は立ちうると判断しました。その後○○についてのOppからの明確な反論もありませんでしたが、重要性や関連性は依然として薄かったほか△△のメカニズムが後から出てきたためdynamicsも考慮し、少し評価を下げました。」
なんとなく分かったでしょうか?

●analysisの量で判断しない
時々、analysisやrefuteの量で判断しているジャッジが見受けられます。「たくさん分析されていたので取りました」「たくさんrefuteが来ていたのであまり取りませんでした」などです。
これもよろしくありません。ディベーターが必至に考えた分析たちです。たくさんあってもちゃんと全部見てあげてください。量で勝ち負けは決まりません!量があってもどうでもいいこと/関連性のないことばかりだったら、取ってはいけません。量より質です。

●責めない
大会では基本的に褒めるところから。お前はダメだった、しか言われないと、ディベートがつまんなくなってしまいます。ディベーターは大会までにいろんなことを頑張ってきたのです。まずその時点でできたことをたたえてあげましょう。どんなに下手なスピーチでも、その中でいい点を見つけられる人は、またいいジャッジではないかと思っています。

この5つを心にとめてAdjudication Speechを作れば、だいぶよいものができると思います。

後輩への部内ジャッジの時に気をつけていることは?という質問をいただきました。
部内では基本ダメ出しします。人によって使い分けますが、ダメなところをきちんと指摘してあげたり、危機感を煽ったり、いろいろです。ただ大会直前だったら安心させてあげるためにほめることもあります。大会前でなくても、最近よくなってきたことがあったらもちろん評価してあげます。
普通のことでしたね。笑



【ジャッジに求められていること】
この章の要点…
●自分のdecisionと理由に自信を持つこと
●RFDの説明は負けたチームのためにある
●フィードバックは2〜3点に絞る

ここでは、大会でのジャッジは何を求められているのか書きます。

ジャッジに求められていることは、正しいdecisionを出すことより、ディベーターが納得できる/勉強になったと感じられるRFDとフィードバックをあげることだと思っています。
もちろんIrrational Judgmentをしていいというわけではありません。どちらかが勝ちだと決めてかかるのではなく、できるだけfairに見てあげなければなりません。ですがそれでも「正しい」decisionというものは必ずしも存在しないと思います。どれだけ名高いジャッジが集まってもsplit decisionというものはあるものです。より重要なのは、自分のdecisionとその理由を自信を持ってディベーターや他のジャッジ、オーディエンスに説明できるかどうかです。

もう一つジャッジに課されている使命があります。それは負けたチームを納得させ、負けた原因を発見できるようにしてあげることです。だから、負けたチームにこそRFDを説明しなければなりません。フィードバックもそうです。負けた時こそ伸びるものです。あるチームの負けを無駄にするかしないかは、その負けの要因を知っているはずのジャッジに大きく関わっているとも言えるでしょう。
私はこれを怠りみつしさんから何度もお叱りを受けました。

フィードバックのコツですが、フィードバックも要点をおさえて簡潔に言うといいでしょう。問題点が多くても、2〜3点に絞って伝えてあげるのが効果的だと高校生の世界大会では言われていました。それ以上は頭に入らないようです。



【パネルこそ能力がいる】
この章の要点…
●パネルはRFDをそのまま述べない。短く簡潔に、違いをつけた所だけを紹介する。
●チェアもパネルに違いをつけた所だけ聞く。それでたいていの場合能力が分かる。

大会でパネルジャッジになることもよくあると思います。チェアはディベーターにRFDを説明しなくてはならないので大変ですが、パネルも同じくらい、いやそれ以上に能力が試されていると思っています。
パネルに与えられる時間はごく限られています。その中で自分の能力を見せるためには、チェアや他のジャッジにディベートを分かっている感を見せ、願わくば新しいinsightを与えられるようなことを簡潔に言わなくてはなりません。
よくありがちなこととしては、チェアがディベーターに対して言うようなRFDをパネルがdiscussion中に言ってしまうことです。しかも長々と言っていたら、チェアは飽き飽きしてまともに聞いてくれません。自分のRFDの整理を始めてしまうでしょう。
それよりも、どこで違いをつけたのか、どこがBurdenでありどこが話されてなかったか、を「簡潔に」かつ「頭の良さそうに・わかっているような雰囲気で」パッケージして言うことです!包括的に述べる必要はありません。

逆にチェアは、ただRFDを聞くのでなく、どこで違いをつけたのかを簡潔に言ってもらうようにするといいかもしれません。これでだいたいそのジャッジの能力がわかるはずです。違いをつけた場所も簡潔に言えない人はディベートが見えてないでしょう。パッとわかりやすく、かつ的を得ていることを言っていたら、高く評価できるはずです。(自分の意見と違う場合もありますが、いいものであれば積極的に受け入れてあげられるようにしましょう。decisionが違うからと言って、その人のRFDはすべてが間違っていると決めかかってはいけません。)



【WSDCこそ今大学生が注目すべき大会】
この章の要点…
●WSDCのユニークな評価方法こそディベーターを深く評価してあげている
●高校生のスピーチはMannerがよく感動に値するほど聞きやすいスピーチ

最後に、私が大学ディベーターこそ見習うべきだと最近強く感じたものを紹介します。それが、高校生の世界大会です。

高校版WUDCであるWSDC(World Schools Debating Championship)という大会があります。この大会は大学と違って各国で出せるチームは1チームです。そのため、どの国も最高のNational Teamを作り上げるために厳しい選考プロセスを設け、最高のコーチ陣を揃えて出場してきます。まさに国の威信をかけた大会です。
私はこの大会に2回(1回はディベーター、1回はジャッジ)参加させていただきました。
WSDCはWorld Schools Styleという世界の高校生用の形式でディベートをするのですが、これは3 on 3でAsianを8分にしたもの(AustralsにPOIをつけたもの、という理解の方が正しいか)です。しかしこの形式でより特徴的なのは、スピーカーのスコアリングの付け方です。点数レンジは60-80(平均70)とあまり変わりはありませんが、点数を「Contents」「Style」「Strategy」の3つの観点からそれぞれ採点することになっています。私はこの考え方がディベートを包括的に、かつ細かく、公平に見てあげるよいものだと思います。
それぞれご説明しましょう。
「Contents」これはそのまま、議論/反論の内容の点です。WSDCでは予選ラウンドの半分がPrepared Motions(事前発表形式の論題)となっているので、よくよくリサーチされたデータを用いられることもあります。それも効果的であればContents点として加算される対象です。(※NDTやHEnDA等でもそうだと思いますが、もちろん出せばいいというわけではないでしょう。その背景にある理由づけやディベートの中での重要性/位置づけなどが証明されない限り取られないはずです。)ただ、配点は40%(レンジは28-36)です。たった40%なんです。笑
「Style」これはスピーチスタイルの点です。アイコンタクトやジェスチャー、スピーチの速度、強弱、言葉の選び方などです。「見せ方」の点だと言えるでしょう。語りかけるスピーチ、フレーミングを意識したスピーチには、わざわざ配点が与えられて点数がつけられるのです。しかも、配点は40%(レンジは28-36)もあります。内容と同じ配点です。これが大きいのか、WSDCのどのスピーカーも非常に落ち着いた様子で訴えかけるように話しており、Wordingもかっこいいものばかりです。(※ただ、勝敗を決める要素としてstyleがcontentsや後述のstrategyを上回ることはありません。contentsは若干Govの方がよかったがOppのジェスチャーが完璧だったのでOpp、というようなことはもちろんありません。ですが、ブレイク順位やスピーカーズスコアには大きく関わってくるのです。)
「Strategy」これは、DynamicsやConsistencyなどの点です。内容的によかったとしても、チーム内やスピーチ内で遅かったり(Dynamicsがなかったり)前のスピーカーと違うスタンスやcharacterize/contextualizeをしていたら(コントラと指摘されていなくても)、きちんと減点されるとルールに明記されているのです。これを意識しWSDCでは、どのチームもチーム内で共有されたスタンスシートがあり、どのスピーカーも同じフレーズでスタンスを述べ、consistentにかつ重要なことを最初から言っていたとアピールしています。(これがむしろ相手のframe/caseに乗らないless engasiveなディベートを生んでいるとは感じましたが、それは置いておいて…)日本ではブリーフィング等で「これも評価してください」とくらいは伝えられていますが、スピーチ点や勝敗に響かせてよいのだときちんと規定されていることは興味深いことでしょう。配点は、20%(レンジは14-18)です。
またこれとは別に、POIで加点・減点を行う点数項目もあります。特別な配点はありませんが、「substantive speechのレベルよりよい/悪いPOIをした場合は、-2〜+2点の間で加点/減点してよい」というルールもあります。スピーチでは73点(平均+3)のよいスピーチをしていたが、POIでコントラしていったので72点、ということが起きるわけです。

ここでみなさんに伝えたいことは2つあります。
1つは、ジャッジングの時にここまで深く考えているでしょうか、ということです。
いいマターが出てきたらとりあえず取る、ということでいいのでしょうか。それはそのディベートで一貫した分析だったのでしょうか。その場所で出してきたことは効果的だったのでしょうか。
逆にコントラしていたら、自動的に取らない/負けにする、ということでいいのでしょうか。WSDCでそのようなケースに遭遇した時は、Contents点はそのマター自体を評価して点数をあげるが、Strategy点で下げる、ということをするように求められます。その上げ/下げ具合はコントラとマターの重要度の度合いによります。より公平なadjudicationとは、そういったバランスを考慮したものになるべきだと思います。
POIもきちんと評価しているでしょうか。RFDに入れてあげているでしょうか。POIが公正に評価されていないと、ディベーターもリスクを冒してまでわざわざPOIに立たなくなってしまうかもしれません。
Styleの評価もそうです。アイコンタクトなどを点数に持ち込むことは大学ディベートではどうか分かりませんが、「見せ方にこだわったスピーチ」「Wordingが洗練されたスピーチ」を、ただの言葉のまやかしだとしていいのでしょうか。そうだとしたら、日本人も世界チャンピオンと同じマターを言えれば優勝できるのでしょうか。
私は別にWSDCの形式に基づいてジャッジをするべきと言っているのではありません。この形式は不慣れなジャッジのために基準を分割し分かりやすくしているだけだとも考えています。ただこれだけ深く、細かく、ディベーターを評価してあげられているでしょうか。

もう1つは、ディベートスピーチの目指すべき姿です。
みなさんは上手いディベーターのスピーチを聞いて研究されているので大丈夫だとは思いますが、ディベート(パーラメンタリーディベート)は「マター絶対主義」の競技ではないはずです(絶対主義と第一主義は違います)。聞いている人が聞きやすい、説得されやすいスピーチを目指すことも同時に求められているのではないでしょうか。
パーラメンタリーディベートのスピーチは、ルーツをたどればイギリスの議会やオーストラリアの裁判で市民や陪審員を説得するためのスピーチと言われているはずです。平均的に合理的な市民は、ある政治家や弁護士の怒涛のような機関銃スピーチまでもすべて頭に入れて合理的に判断してくれるのでしょうか。
よいMannerのスピーチを聞きたければ、WSDCのディベートを見てみてください。2015年はシンガポールと香港が神でした。シンガポールはコーチがよく研究しているようで、毎年完成された美しいスピーチをしています。Shengwuを聞くのもいいと思いますが、あれは耳の保養で、日本人EFLスピーカーの手に届きそうなスピーチはこのくらいでしょう(と言いつつShengwuもWSDC Team Singaporeの出身です。彼の美しいスピーチもここから始まっているのかもしれません。)とりあえず、WSDCで見た高校生のスピーチは感動に値するものでした。
みなさんがディベートに求めていることはそれぞれだと思いますが、この高校生のような「聞きやすい」スピーチを目指してみてもいいのではないか、と思っています。



様々な視点からジャッジについて書いてみました。
ただ、いつも言っておりますが、ディベートには正解はないと思っています。
今回は少し踏み込んで話したところもありましたが、別の方は全く別のことをおっしゃると思います。私よりずっとジャッジで活躍している日本の先輩後輩もたくさんいますし、近くの国にもすばらしい方がたくさんいらっしゃいます。ジャッジを極めたければぜひともその方たちにも話を聞いて欲しいですし、私もお聞きしたいです。
今回ご紹介したものを鵜呑みにはせず、いろんなものに触れ、自分に合うやり方を見つけ出してほしいと思います。

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最近ジャッジが苦手で全力で避けていた私ですが、この文章を読んでこれからは克服も兼ねて練習に励みたいと思います笑

これからいよいよ秋の怒涛のディベートシーズンが幕開けです!
皆さんも是非ディベートだけではなく、ジャッジとしてもスキルアップをはかってみませんか?